鈴木 十三夫 BISTRO CHAUD LAPIN オーナーシェフ

青森
中央卸売市場で遊んでいた子供時代

――ふるさとの思い出について、聞かせてください。
「横浜市神奈川区の実家から歩いて行ける距離に、中央卸売市場がありました。学校帰りに友達と連れだって遊びに行くと、市場の人が『ぼうず、食っていくか?』とその場でスイカを割ってくれたり、当時は高級品だったバナナを分けてくれたりしましたね。バナナはまだ青くて固い状態でしたが、熟すまで待てずに、全然甘くないけれど、ありがたく食べていました。」

――子供の頃よく食べていた郷土料理・名物料理は?
「何といっても小柴(横浜市金沢区)で獲れるシャコです。生きたままの新鮮なシャコをバケツで買ってきて、塩ゆでしてむいて、そのまま食べていました。それと、シャコには小さなハサミがあるのですが、その爪の部分だけをかき揚げにすると絶品です。爪は小柴の漁師とのつてがないとなかなか手に入らないので、知る人ぞ知る名物料理ですね。」

第二のふるさと・青森のシャモロックに惚れ込む

――特に印象的な食に関する思い出を、教えてください。
横浜には子安浜という漁港があり、今みたいに埋め立てられる前は江戸時代から続く漁師町として活気がある場所でした。今や高級魚のハゼも、私が子供の頃は安い魚だったので、天ぷらにして食べたり、正月用の甘露煮を作るためにザル一杯に買って帰ったりしていましたね。カレイも当時の特産品だったので、母にせがんで好物の煮付けをよく作ってもらったのを覚えています。

――青森にも思い入れがあるとか。
「妻の実家の青森県弘前市も、私の第二のふるさとと呼びたいほど大好きな場所です。おいしい食材が豊富で、特に地鶏の『シャモロック』は、フランスでナンバー1の誉れ高いブレス地方のブランド鶏に匹敵する味と品質。とことん惚れ込んでいます。また、岩木山のふもとで採れるとうもろこし『嶽(たけ)きみ』は強い甘みが特徴で、当店でも旬の時期はスープやムースにして提供しています」

鈴木 十三夫 鈴木 十三夫
「ふるさと」の食材で日仏のコラボレーションを

――2つのふるさとが与えた影響は?
「幼い頃に横浜の港や市場で、魚や野菜などいろいろな食材に触れたことが今の私のベースになっています。また、青森では、関東では見かけない黒ソイなどの地魚や、『けの汁』『貝焼き』『ニシンの麹漬け』といった郷土料理、妻の実家の畑で採れるもぎたての新鮮な野菜や果物のおいしさを知り、より食材を身近に感じることができました。2つのふるさとで得た経験が、シェフとしての自分に大きな影響を与えています。」

――最後に、ふるさとへの応援メッセージをお願いします。
「愛着のある横浜の地で、レストランを開業して9年になります。かつてフランスの一流シェフの元で様々な技術を習得してきた経験を生かして、今後も本場で味わえるような本格的なフレンチを提供し続けたい。そんなさらなる高みを目指すなかで、青森のシャモロックをはじめとする、私が惚れ込んだ『ふるさと』のおいしい食材を取り入れ、日本とフランスの味の素晴らしいコラボレーションを実現させていきたいですね。」